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音響関連法(ステープリング・テクニクス)

【 音響関連法 】

――――――――――――――――――――――――――――――
 やがて耳のなかまで締めつけられたように、世界から音が消えていった。
(あぁ…砂丘のように…静か…だ、ナァ……、…………、………………)

  ZOOの動物園
「あの動物たちはなんなんですかァ――――――ッ!!」
 大音声によって、ダイニングキッチンがこんにゃくのように震えた。
 テーブルを叩きながら叫んだ高橋は、目の前にすわる男性を睨みつけた。

※「アキハバラ∧デンパトウ」より引用
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ステープリング・テクニクスのうち、「音」の相似や落差を利用してシーン同士に関連性を持たせるのが、「音響関連法」である。

上記引用文では、まず、(あぁ…砂丘のように…静か…だ、ナァ……、…………、………………)と徐々に沈黙していく内言を書いたあと、一行空きを挟んで、絶叫を入れている。その音の落差を使うことによって、シーンのつなぎにメリハリをつけている。

本来は映画などで使われている手法。
音を使った手法なため引用が難しいが、以下に京都アニメーション制作の「kanon」の第1話より画像を引用する。
たい焼きの食い逃げをした月宮あゆに、主人公の相沢祐一が説明を求めるシーン。

kanon1話の「それだけ?」①
「……それだけ?」(小声)


kanon1話の「それだけ?」②
「それだけ。」(小声)


kanon1話の「それだけ?」③
「うぐぅ~~~~っ!」(大声)


はじめに、「……それだけ?」「それだけ。」という小声でやりとりをしたあと、カットが切り替わり、連行される月宮あゆが大声で「うぐぅ~~~~っ!」と叫ぶ。
「小声→大声」という音の落差を利用して、突然のシーン転換を心地よくつないでいる。

この例では音のメリハリを利用しているが、音の類似によってつなぐ方法もある。
経過明示法」の引用文にある、「ガチッとドアを押しあけた。」→「かちゃ、とドアが開かれた。」という流れは、時間の経過を示す方法であるが、同時にドアが開かれる音を利用してつないでいる方法ともいえる。

類似連鎖法(ステープリング・テクニクス)

【 類似連鎖法 】

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「ヌグはオタクではないのです!」
 顔を真っ赤にした子ネズミが寝室に消え、ドアがとじられた。
 パタン。
             ∽∵∧―∧
 と、高橋は参考書をとじた。※①
「だめだ……頭に入ってこない。」
 勉強しようにも、すっかりつかれきってしまっていた。きょうはいろいろありすぎた。
 ため息をつき終わる間もなく、緞帳がおりるようにゆっくりまぶたが閉まっていく。
 眠り目になって、シャーペンをぽんと放り投げる。
 自由の身となったペンが座卓に着地し、転がった。
 ころりと一八〇度――
             ∽∵∧―∧
 寝返りを打つ。※②
(……ん?)(ここ?)(なんだっけ)(そうだ、勉強の途中で)
 眠りからさめたが、まぶたの緞帳はまだあがっていない。音も自分の鼻息しかきこえない。もう朝かどうかもわからないが、体の内側の重たさから、かなりの時間寝てしまっていたことがわかる。夢を見たおぼえもない。つかれのあまり熟睡してしまったようだ。


※「アキハバラ∧デンパトウ」より引用
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映像におけるマッチカットのように、類似した動きによってシーン同士をつなげる方法。
「動作跨ぎ法」とのちがいは、動作の「意味」の類似によってつなげている点。

上記引用文の※①の個所では、ドアが閉じられる動きと、参考書を閉じる動きの類似を示すことによって、場面転換しても物語の調子を持続させている。

もし仮に、「パタン。 (空白行) と、高橋は参考書を閉じた。」の部分を丸々削ったとすると、空白行を挟んでシーンの断絶が発生してしまう。
しっかりと一区切りつけるのであればそれでもいいが、この場合は調子の連続性を保って軽快につぎへ移るほうが、演出上望ましい、と作者は考える。

また、上記引用文の※②の個所も、シャーペンの転がる動きと、主人公の寝返りの動きを似通わせている。
これによって、「主人公が寝る→目をさましてつぎの展開へ」という流れをスムースにしている。

経過明示法(ステープリング・テクニクス)

【 経過明示法 】

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 ようやく洗濯機にとりつくと、身をのばして洗濯機の一時停止をおした。
「きゅう~~~~~~……」
 洗濯槽が止まったあとも、ペンネは目をぐるぐるとまわしつづけ、ボウフラのようにふらふらになっていた。
「しっかりしてくださいペンネさんっ! 生きてますか!」
「ありえない! ここの住人ありえない!」
「高橋! でていくです!」
 ペンネを介抱しようとするヌグにキッと睨まれ、高橋は「ありえな~い!」と首をふりながら、駈け足で逃げだした。
 ガチッとドアをおしあけた。
             ∽∵∧―∧
 かちゃ、とドアが開かれた。
「ペンネさん、大丈夫ですか?」
 脱衣室からヌグがでてきた。熊からネズミの姿に変身していた。それは着ぐるみというより、ワンピース型をした子供用の寝間着で、ネズミの耳のついたフードがついている。
「ゆ~ん……まだくるくるしてる……」
 ソファで横になっているペンネが力なく応えた。こちらはいつもの横縞(ボーダー)柄のバスクシャツにショートパンツ姿である。
 高橋は、部屋の隅で体育坐りをして小さくなっていた。うつむいた顔に暗い影を落とし、「ありえない……ありえない……」とぶつぶつくり返している。

※「アキハバラ∧デンパトウ」より引用
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時間の経過を明示することにより、物語の演出をするのが「経過明示法」である。
ほかのステープリング・テクニクスでは、動きの連続性や類似性によってシーンをつなげ、その場合は「動き」が主役になるが、この経過明示法では「時間」が主役となる。

上記引用では、「ガチッとドアを押しあけた。 (空白行) かちゃ、とドアが開かれた。」という形でシーンがわかれる。この部分だけを見ると、「二度のドアの開閉を編集でつなげたマッチカット的つなぎ」のように見える。
しかし実際は、「ガチッとドアを押しあけた」という主体的な表現から、つぎの「かちゃ、とドアが開かれた」という受動態に移行することで、Aシーンから時間が経過してBシーンがはじまっていることを示している。

「ガチッと」/「かちゃ、と」というオノマトペの使い分けも、「時間が流れた結果、混乱した事態が落ち着いた」ということを示すのに役立っている。

このように「時間の経過」を示すためには、場所を一カ所に固定したほうがやりやすい。
AシーンからBシーンに移行するときに場所がちがってしまうと、「場所が移動したこと」に読者の興味が移ってしまい、シーンの連続性が途絶えてしまう。
上記の引用文では、一つのドアに限定したことにより、時間の流れを伝えようとしているが、もっとわかりやすい例を挙げると、たとえば「花」を使ったやり方がある。
下記の例文では、とてもありがちではあるが、桜を中心として「時間の経過」を示すことでシーン同士をステープリングしている。

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Aシーン
まだ肌寒さは残るが、学校にある桜並木の枝木には、明るいつぼみが開こうとしていた。

(空白行)

Bシーン
桜色の破片が舞い散る道を、アイロンのきっちりかかった制服たちが通りすぎていく。
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トリプルアクション(ダブルアクション)

【 トリプルアクション(ダブルアクション) 】

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「だめですペンネさん、でてきちゃ、」
 が、着ぐるみの足もとがつるりとすべった。
「ぺちっ!?」
 ハエ叩きを思わせるいきおいで倒れこみ、ぺしんと顔から床に叩きつけられた。
 もしコマ送りでそのシーンを正面から再生したとすれば、倒れこむいきおいによってピンクのシャンプーハットが吹っ飛び、後ろ髪が風圧でまくれあがってエリマキトカゲのようになっていく様を確認することができるだろう。
 真横から撮影した映像があれば、ヌグがはじめに踏みだした右足の一歩が、つぎなる一歩を踏みだすために力をこめた刹那に悲劇が起きたことがつぶさに観察できよう。右足にこめられた力はヌグの体を前進させることなく、つるりと床を上滑りし、一瞬にしてその体を水平方向へ倒すことになった。その場でプールの飛びこみをするようなものだ。そして、両手を前につきだした恰好で、濡れた床に顔から着水した。
 そう、床は濡れていたのだ。ヌグ自身がはなったシャワーによって。
「…………」
 金の延べ棒のように動かない。

※「アキハバラ∧デンパトウ」より引用
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一つのアクションを、描写のしかたを変えてくり返し表現する手法。
二回おこなえばダブルアクション、三回おこなえばトリプルアクションとなる。
これはもともと映像で使われているテクニックで、それを小説に応用した。

以下の画像は、「中二病でも恋がしたい!」の1話からの引用。
ヒロインの六花が、停車した電車へ手をふりだし、魔法のように扉をあけたように見せるアクションを、カメラを変えて三度くり返している。(四枚目でドアが開く)

中二病のトリプルアクション①
中二病のトリプルアクション②
中二病のトリプルアクション③
中二病のトリプルアクション④


また、「のんのんびより」の4話でも、ダブルアクションがでてくる。
カニをとる動作を、カメラを変えて二度くり返している。

のんのん4話ダブルアクション① (1)
のんのん4話ダブルアクション②


くり返しアクションは二度か三度であることが多いが、まれにそれ以上くり返されるときもあり、「けいおん!!」(二期)の8話では、田井中律の「そんな……」という台詞と動きが、カメラアングルを変えて五度もくり返されている。

けいおん8①
けいおん8②
けいおん8③
けいおん8④
けいおん8⑤


出崎統による、同一の映像をパンしながらリズミカルにくり返す「三回パン」という演出法も、これらの一種といえる。

上記引用文では、着ぐるみ姿の「ヌグ」というキャラクターが足をすべらせて倒れ込むアクションが、三回おこなわれている。
この演出法の効能は、アクションを強調できることだ。
レトリックにおける「反復法」を、アクションに応用したものともいえる。

映像におけるくり返しの場合は「タイミング」が重要で、リズミカルにくり返さないと気持ちよさがでない。
小説の場合は、メディアの特性上、映像よりも気持ちよくくり返すことが難しい。
たんに文章を変えてアクションをくり返しただけでは、読者に意図が伝わらないおそれもある。

上記引用文では、「漸層法」というレトリックと合わせ、トリプルアクションをおこなっている。
一度目は「ハエ叩きを思わせるいきおいで倒れこみ、ぺしんと顔から床に叩きつけられた。」と軽く一行で表現したあと、二度目はそれよりも長く描写し、三度目はさらに長く描写することで、だんだん文意を強めていっている。
それにつれ、倒れ込む時間の流れもどんどんスローモーションになっている。


なお、くり返しの動作の合間に、空白行を挟んでべつのシーンとしておこなえば、ステープリング・テクニクスの「場面反復法」に近くなる。

場面反復法(ステープリング・テクニクス)

【 場面反復法 】

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 そして一つ咳払いすると、羞恥をごまかすため、あえて強気をよそおった。
「まちなさい! まだえいぷりゅ、えいぷりうゅーりゅの話は終わってないぞっ!」
 嚙み嚙みで追いかけていくと、ばったり、熊と遭遇した。

  ヌグ、脱ぐ
「逃げるなっ! どうせえいぷりゅで嘘をつくんなら、東大生(俺とはいってない)がびっくりするような嘘をついてみせろ!」
 そういいながら追っていくと、ペンネが玄関でエンジニアブーツに素足をつっこんで、ドアをあけていた。高橋も彼女につづいて通路へ飛びだした。
「どうせなら人喰いUMAが襲ってきたみたいな壮大な嘘を、」
「がおー。」
 毛むくじゃらの生物が、両手をふりあげて平坦に叫んだ。
 熊だった。
 そのまねをして、ペンネも万歳しながら「がおー」と返す。
 高橋は素っ頓狂に「クマー!?」と叫んだ。

※「アキハバラ∧デンパトウ」より引用
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ステープリング・テクニクスの一つ。
Aシーンの最後を、Bシーンの頭でもう一度くり返すこと。
連載マンガやテレビアニメでよく使われる手法を、小説に応用する。

上記の小説の例文に触れる前に、まずマンガにおける使用例を以下に説明する。


①マンガの一話目のラストで主人公たちが絶体絶命のピンチになっているところに、味方が登場。「もう大丈夫だ!」→次週へつづく。

②二話目の冒頭で、主人公たちが絶体絶命のピンチになっているところをもう一度描き、そのあとに味方が登場。「もう大丈夫だ!」→つぎの展開に進む。


上記の例では同じシーンを二回くり返すだけだが、実際は、一度目と二度目で同じシーンを描いていても多少の変化をつける場合が多い。
たとえばアングルを変えて描いたり、台詞の細部を変えたりする。上記の例でいえば、「もう大丈夫だ!」の台詞を、二度目のときは「間に合ったようだな」などと変化させたりする。

マンガにおけるこの場面反復法は、先週の号の展開をわすれてしまった読者に、もう一度思いだしてもらうためという配慮の面が強い。

テレビアニメについても同様のことがおこなわれる。
以下の一連の引用画像は、「ラブライブ!」5話から。

ラブライブ5話「あなたがアイドル研究部の部長?」①


Aパートのラスト、主人公の「高坂穂及香」が、上記引用画像の「矢澤にこ」に対して「あなたがアイドル研究部の部長!?」とOFF台詞で尋ね、そのままCMに入る。↓

ラブライブ5話「あなたがアイドル研究部の部長?」②


そしてCM開け、Bパートの頭で、もう一度「あなたがアイドル研究部の部長!?」というが、カットは最初とは異なっている。↓

ラブライブ5話「あなたがアイドル研究部の部長?」③


Aパート最後と、Bパート頭で同じ台詞をいわせることにより、CMで断絶したシーンに連続性を持たせている。

それでは、書き下ろし小説で、この動作反復法を使う利点はなんだろうか。
それは、物語の進行スピードをコントロールできる点と、強調したい場面を二度くり返せるという点にある。

まずAシーンのラストで読者をおどろかせ、空白行をはさんでBシーンへ移ってから、時間をさかのぼってもう一度Aシーン最後の展開を書くことにより、読者は通常の一直線の物語の流れとはべつの流れを体験し、特別な印象を残すことになる。

なお、空白行を挟まずに一つのシーンのなかでくり返す場合、ダブルアクションやトリプルアクションと呼ばれるテクニックとなる。
書いてる人

藍上 陸(らんじょうりく)

藍上 陸(らんじょうりく)
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小説書いてます。

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