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押井守監督の「METHODS」

復刊ドットコムで、押井守監督の「METHODS」を二冊、(いまさら)購入しました。

METHODS ~押井守「パトレイバー2」演出ノート
「イノセンス」METHODS 押井守演出ノート

それぞれ厖大な数のレイアウトを掲載し、押井監督が一つ一つ演出意図をコメントしています。
パトレイバー2のほうは10刷で、イノセンスのほうは再版となっていました。
この手のものにしては異例なほどの人気で、それほど評価の高い本といえます。

「METHODS」の感想の前に、まず「レイアウト」がどういうものかについて。

アニメ制作におけるレイアウトという工程は、高畑勲&宮崎駿コンビによって、「アルプスの少女ハイジ」からはじまりました。
従来は絵コンテを描いたあと、いきなり原画と背景を描きはじめて、それをコンポジットしていたそうです。
昔は比較的少人数で作っていたこともあり、現場レベルで「ここはこんな感じで」という話し合いでなんとかなっていたそうな。

しかし、やはり厳密な画作りをしようと思ったら、背景と人物を一枚絵としてまず描きあげる工程が必要ということになり、ハイジからレイアウトの工程がはじまったそうです。
ハイジのレイアウトは、全話全カットすべて宮崎さんが一人で描きあげていたそうです。一話あたり300カットぐらいありますから、とんでもない作業量です。
この厖大なレイアウト作業によって、のちの宮崎アニメにつながる演出力が培われたようです。

現在のレイアウトは通常、そのカットを担当するアニメーターが描いて、演出チェックにまわすという流れになっています。
しかしP.A.WORKSのように、レイアウトを3DCGで作っているところもあります。
アニメーターや演出家にとって、このレイアウト工程が一番手間がかかるそうなので、3DCGで作ることができればかなりの負担軽減になるそうです。(CGアニメーターはたいへんだろうけども)

P.A.WORKSの「SHIROBAKO」で感心したのが、室内でのシーンが多いのに、綺麗にレイアウトができていたことでした。
宮森たちのいる制作部屋や、監督や演出たちのいる部屋など、手書きでレイアウト起こしていくと本当にたいへんそうです。
それが3DCGの活用によって、比較的容易にできるようになったのでしょう。(それでもたいへんだろうけども)

3Dによるレイアウトについては批判的な意見もあるそうですが、これから増えていくのではないでしょうか。
アニメーターの多くは、レイアウトよりもキャラを動かすことのほうが楽しいそうなので、レイアウト作業をべつの人に任せたいと考えるかもしれません。
なにしろレイアウトを描く能力と、キャラを動かす能力はべつですからね。
しかも、テレビアニメに求められる作画クオリティも昔よりあがっていますので、アニメの作画も分業したほうがいいのかもしれません。
ただ、CGアニメーターたちの負担が増していくという弊害はあるでしょうね。そこら辺のバランスをどうするかでしょうか。

また、パソコンで機械的に決めたパースペクティブだけでは不十分な場合があります。
演出意図にそって、あえてパースを歪ませたりしなければならないことがあるのです。

そういったレイアウトにおける演出意図を解説したのが、押井守監督の「METHODS」というわけです。

A4判で180P前後にわたって、数多くのレイアウトが掲載されているだけでも壮観です。
現在、絵コンテ集などは劇場版を中心に出版されることが多くなりましたが、レイアウトについてはまだまだ一般の認知が進んでいないように思われます。
押井守監督が「METHODS」を出版したのも、業界の内外にレイアウトの重要性を伝えようとしたためらしいです。
それにくわえて、押井監督が自身の演出論をもっとも語りやすいのがレイアウト工程である、ともいえそうです。
富野由悠季監督や出崎統監督のように、絵コンテのできをもっとも重要視する監督もいらっしゃいますが、押井監督はアニメを「映画」に引きあげるために、一つ一つの画面のクオリティをあげる方向性に進んでいったものと思われます。
(むろん、押井監督も絵コンテを重視されていますが)

「METHODS」には数多くのレイアウトが収録されており、絵を描く人にとってはよい教材となり、演出志望の人にとってもたいへん勉強になるものだと思います。
「演出(処理)」の仕事の一端を知ることができます。

カメラレンズの選択や、アイレベルの設定意図、消失点を置く場所など、技術的なことが多く語られています。
専門家でない身からすると難しいところもあるのですが、一アニメファンとしてたいへん興味深いです。

また、難しいことだけでなく、実用的なアドバイスも見られます。
たとえばこんな感じ。

――――――――――――――――――――――――――――――
俯瞰のアングルが〝覗く―見られている〟という印象を出しやすいという、その典型。
覗く―見られているという感覚を、特に上方からの視線を通して巧みに描いた映画として〝サスペリア〟などがありますが、こういった手口はアニメに流用しやすい(パクリやすい)ので、おおいに参考にすべきです。
一般にケレンの強い映画―よくできたサスペンス映画やホラー映画には見るべきアングルやカメラワークが多いものです。アニメの演出家は文芸映画などには目もくれず、ガシガシとヤクザな映画を見るべきです。

パトレイバー2「METHODS」 P155・CUT448コメント
――――――――――――――――――――――――――――――

こんな具合に、押井監督の映画に対する考え方が多く語られています。

映画監督が書いた本というのは多くありますが、どうしても内容が概括的になってしまったり、抽象論になってしまいがちです。
それはそれで大切なことではあるのですが、映画作りというのがすべてディテールの積み重ねの上に成り立っている以上、具体的な技術の上に成り立つ演出論こそが一番重要だと思います。

この「METHODS」二冊は、まさにレイアウトという素材を使いながら具体的な演出論が語られており、貴重です。
3000円ほどするので少々高いかと思われるかもしれませんが、実際に読んでみればむしろお値打ちということがわかると思います。

Amazonなどでは中古でプレミアム価格がついているようですが、復刊ドットコムなら通常価格で購入できます。
二冊買えば送料も無料になるので、興味のある方はぜひ。

まったくの蛇足ですが、押井作品では「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」と「機動警察パトレイバー 劇場版」が好きです。
パトレイバー2もいいのですが、どちらかといえば最初の劇場版のほうが素直に娯楽してて好きです。

OVAでは「御先祖様万々歳!」が前衛的なことやっててすごいです。
この路線を継承するアニメがあったらいいのですが……長回しで演技をつけたりするのはアニメーターの負担が大きすぎるので難しいかもしれません。
御先祖は参加してるアニメーターがすごすぎる……。
書いてる人

藍上 陸(らんじょうりく)

藍上 陸(らんじょうりく)
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小説書いてます。

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