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高雄統子演出の「ライティング」

怠けてばかりのこのブログにしては、珍しく気合いを入れて書いている、高雄演出シリーズ。

高雄統子演出の「クルマ」
高雄統子演出の「部屋」
高雄統子演出の「止め絵ED」
プロデューサーさん! 二期ですよ、二期!!
高雄統子演出の「位置どり」


これまで、アイマスを中心に、まるでストーカーのように高雄さんの演出を追ってきたわけですが、今回はいよいよライティングです。
光と影の演出についてですね。

高雄さんといえば、京アニ時代にはじめて演出(処理)した「kanon 17話」のときから、ライティングについてはこだわりを持ってらっしゃいました。

初演出なのにもかかわらず、うますぎです。

もちろん、絵コンテ担当の三好一郎(木上益治)さんや、監督の石原立也さんのアドバイスもあったでしょうし、京アニの優秀な撮影スタッフの力添えもあったのでしょうが……。
川沿いのシーンとか、噴水のシーンとか、美坂家のシーンとか、ビビるぐらい綺麗なライティングでした。
京アニ時代の高雄さんについては、いずれまた感想を書いてみたいと思います。

デレマスでは、光を浴びる「アイドル」という題材をあつかっていることもあり、高雄さんのライティング力がぞんぶんに発揮されています。

今回は、デレマス1話を使って、そのライティング――光と影の演出――について私見を書いてみます。
絵コンテは高雄監督、演出は原田孝宏さんと矢嶋武さんですが、1話ということで高雄監督の演出指示がかなり入っているものと思われます。

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「シンデレラガールズ」というタイトルになぞらえた、とても象徴的なシーンです。
階段の上の光のなかにいる三人の少女に対し、階下にいるプロデューサーが落ちてきたガラスの靴を拾います。
一目見て、明暗による象徴がはっきりと読みとれますね。

ちなみに、プロデューサーが画面の左側(シモテ)にいますが、このあともプロデューサーは基本的にシモテに位置します。
一方、卯月や凛などのアイドル候補たちは、プロデューサーと接するときは右側(カミテ)に位置します。

富野由悠季監督がよく強調されるように、シモテは弱い立場の人間が立ち、カミテは強い立場の者が立ちます。
つまり、シモテのプロデューサーは、じつは下の立場であるということです。
しかし、一話の最後に一度だけこの立ち位置が逆転します。(あとで説明します)

つぎに移ります。

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卯月がストレッチしているシーンですが、このとき卯月とトレーナーの頭上の照明が消えています。
この作品において、光というものは「アイドルのステージ=めざす目標」を意味しています。
卯月の頭上のライトが消えているということは、まだ彼女はスタート地点に立っていないということをあらわしています。

そのあと、カメラが切り替わって、同じ部屋の掲示板を映しますが……

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同期の子たちと映っている集合写真は、光が当たらず暗い状態です。
このカットに、「同期の子、みんなどんどん辞めていっちゃったのに……」というトレーナーの台詞が重なります。
まさにライティングによって、アイドルの「影」の部分を表現しているわけですね。

そのすぐあとのカットで、卯月が「よぉしっ、わたし、もっとがんばりまーす!」といいながら、ストレッチをしますが――

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卯月が、光のさすほうに向かって、思いきり手を伸ばしていますね。
つまりこれは、卯月はまだ「光=アイドル」を諦めていないということを表現しているわけですね。
なにげない描写なので、自分も最初気づかなかったのですが、くり返しみたときにふと思いあたり、すごく感心しました。

そのあと、いきなり不審な男がやってきます。

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一連のカットで、この不審者の上半身は影まみれです。
しかし、プロデューサーであるとわかったあとは、

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プロデューサーの上半身が光ではっきりと映されます。あやしい人じゃなかったというわけですね。
明暗を使って、わかりやすく人物の雰囲気を変えています。

シーンが飛んで、卯月がまたトレーニングをしている個所。

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今度は、卯月の頭上の照明が点っています。
前の、点っていないカットと比べるとわかりやすいですね。↓

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プロデューサーがあらわれたことで、アイドルへの道がひらけたということをあらわしているわけですね。
一方、プロデューサーは渋谷凛という子をスカウトをしようとしますが、凛はなかなか了解しません。

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上記カットで、プロデューサーが「いま……あなたは楽しいですか?」とたずねますが、このとき凛は「え?」と怪訝そうな表情をするばかりです。
このとき、凛の顔に影はさしていませんが、そのあとのシーンになると……。

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アイドルの誘いを断った凛ですが、プロデューサーの言葉が頭から離れないようです。
上記二枚のカットでは、どちらも凛の顔に影がさしています。
一枚目は、体育館で部活動をする高校生たちを眺めているカットですが、後ろから光が当たっているため、顔が暗くなっています。
二枚目も、後ろから照明が当たっている上にうつむき加減なため、やはり顔が少し暗い。

これらは、「凛が考えている」ということをあらわしています。
顔に影を落とすことで、凛の内面を表現しようとしているのですね。

その直後のシーンで、ふたたび養成所の卯月のカットがあらわれますが、

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こちらは屈託のない明るい表情です。
迷っている凛と対比しているわけですね。
対比はこのあともつづきます。

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公園のシーン。
凛と卯月は、木の影のなかにいます。
一方、わかりづらいですが、右奥のベンチにプロデューサーがすわっており、こちらには影がないように見えます。

上のほうで書きましたが、ここではプロデューサーはシモテではなくカミテに位置しています。
これまでとは逆になり、強い立場(頼れる存在)ということになります。
また、「光のなかにいる存在」ということで、アイドルたちを導く存在であることを示しています。

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卯月が、影から光へと走りだすシーン。
これも非常に象徴的なカットですね。卯月はためらいなく光のなかへと進みだします。
卯月がアイドルになりたがっていることを映像で語っています。
一方、まだ迷っている凛は、ペットの犬の「花子」が逃げだすことにより、影から足を踏みだすことになります。

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逃げだした犬の花子は、一目散にプロデューサーのほうへと走りよります。
それを追って凛もプロデューサーと対峙することになります。
この花子の行動は、凛の無意識の本音をあらわしている、というフロイト的な解釈も可能かもしれません。
卯月のように無邪気にプロデューサーについていきたいという深層心理を、花子に仮託していると。
ここでも、プロデューサーはカミテに位置しています。
最初のときはシモテだった彼が、カミテとなってふたたび凛をスカウトし、成功するという流れです。
両者の関係性の変化を、シモテとカミテの位置で表現しているわけですね。
分析的に見ているわけではない、ふつうの視聴者でも、この位置関係の変化を見て、なんとなく「なにか変わった?」と感じるかと思います。

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夜、自室で昼間あったことを思いだす凛。
ここでも顔に影がかかっています。つまり凛の内心に注意を向けて、「考え中だよ」ということを表現しているわけですね。
それでも鼻から下に光がさしているので、もうじき答えがでることをあらわしています。

一話を通じて、ざっと光と影についての演出を説明してみました。
どちらかというとさりげないライティングが中心でしたが、高雄さんの場合、もっと派手なライティングも非常にうまいです。
上記のkanon17話もそうですし、デレマス2話からはじまるOPでも非常に綺麗なライティングがありました。
たとえばこれ。

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op2.jpg
op3.jpg
op4.jpg


サビのところで卯月が踊っているカット……なのですが、静止画ではやはりこのすばらしさが伝わらない!
動画でないと伝わらないのがつらい。ライティングの解説の難しさです。

ちょっと前に、若いアイドルの方が、テレビで「なぜ照明なんて仕事をやろうと思ったんだろう」という趣旨のことを述べて、批難にあうというできごとがあったようです。(テレビはアニメしか見ないので自分は知らなかったのですが)
その方はきっと悪気はなく、純粋な疑問としてそれを口にしただけでしょうが、やはり照明の仕事というのはすごく大切なものです。

実写の映像であれ写真であれ、プロとアマの一番のちがいはライティングである、といっても過言ではないと思います。
とくにモノクロ映画の巨匠たちは、尋常ではなくライティングにこだわっていました。
役者の顔にはっきり光を当てないと、ちゃんとした映像にならないんですね。
黒澤監督などもライティングにまつわる逸話が多く残っています。
強いライトを当てすぎて、役者のカツラから煙がでていたとか、下から光を当てるために、地面に大きな穴を掘ってそこに照明係を入れたとか……。

撮影所の電力は有限ですから、巨匠ほど多くの光を使うことがゆるされたそうです。
まさに光を制する者は映画を制す、ですね。
すぐれたアニメの演出家が光と影にこだわるのも当然といえます。

小説でも、このライティングの概念をとりいれることができないかと考えたりするのですが、なかなか難しいです……。
書いてる人

藍上 陸(らんじょうりく)

藍上 陸(らんじょうりく)
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小説書いてます。

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