場面反復法(ステープリング・テクニクス)

【 場面反復法 】

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 そして一つ咳払いすると、羞恥をごまかすため、あえて強気をよそおった。
「まちなさい! まだえいぷりゅ、えいぷりうゅーりゅの話は終わってないぞっ!」
 嚙み嚙みで追いかけていくと、ばったり、熊と遭遇した。

  ヌグ、脱ぐ
「逃げるなっ! どうせえいぷりゅで嘘をつくんなら、東大生(俺とはいってない)がびっくりするような嘘をついてみせろ!」
 そういいながら追っていくと、ペンネが玄関でエンジニアブーツに素足をつっこんで、ドアをあけていた。高橋も彼女につづいて通路へ飛びだした。
「どうせなら人喰いUMAが襲ってきたみたいな壮大な嘘を、」
「がおー。」
 毛むくじゃらの生物が、両手をふりあげて平坦に叫んだ。
 熊だった。
 そのまねをして、ペンネも万歳しながら「がおー」と返す。
 高橋は素っ頓狂に「クマー!?」と叫んだ。

※「アキハバラ∧デンパトウ」より引用
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ステープリング・テクニクスの一つ。
Aシーンの最後を、Bシーンの頭でもう一度くり返すこと。
連載マンガやテレビアニメでよく使われる手法を、小説に応用する。

上記の小説の例文に触れる前に、まずマンガにおける使用例を以下に説明する。


①マンガの一話目のラストで主人公たちが絶体絶命のピンチになっているところに、味方が登場。「もう大丈夫だ!」→次週へつづく。

②二話目の冒頭で、主人公たちが絶体絶命のピンチになっているところをもう一度描き、そのあとに味方が登場。「もう大丈夫だ!」→つぎの展開に進む。


上記の例では同じシーンを二回くり返すだけだが、実際は、一度目と二度目で同じシーンを描いていても多少の変化をつける場合が多い。
たとえばアングルを変えて描いたり、台詞の細部を変えたりする。上記の例でいえば、「もう大丈夫だ!」の台詞を、二度目のときは「間に合ったようだな」などと変化させたりする。

マンガにおけるこの場面反復法は、先週の号の展開をわすれてしまった読者に、もう一度思いだしてもらうためという配慮の面が強い。

テレビアニメについても同様のことがおこなわれる。
以下の一連の引用画像は、「ラブライブ!」5話から。

ラブライブ5話「あなたがアイドル研究部の部長?」①


Aパートのラスト、主人公の「高坂穂及香」が、上記引用画像の「矢澤にこ」に対して「あなたがアイドル研究部の部長!?」とOFF台詞で尋ね、そのままCMに入る。↓

ラブライブ5話「あなたがアイドル研究部の部長?」②


そしてCM開け、Bパートの頭で、もう一度「あなたがアイドル研究部の部長!?」というが、カットは最初とは異なっている。↓

ラブライブ5話「あなたがアイドル研究部の部長?」③


Aパート最後と、Bパート頭で同じ台詞をいわせることにより、CMで断絶したシーンに連続性を持たせている。

それでは、書き下ろし小説で、この動作反復法を使う利点はなんだろうか。
それは、物語の進行スピードをコントロールできる点と、強調したい場面を二度くり返せるという点にある。

まずAシーンのラストで読者をおどろかせ、空白行をはさんでBシーンへ移ってから、時間をさかのぼってもう一度Aシーン最後の展開を書くことにより、読者は通常の一直線の物語の流れとはべつの流れを体験し、特別な印象を残すことになる。

なお、空白行を挟まずに一つのシーンのなかでくり返す場合、ダブルアクションやトリプルアクションと呼ばれるテクニックとなる。
書いてる人

藍上 陸(らんじょうりく)

藍上 陸(らんじょうりく)
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小説書いてます。

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