泡状内言法(小説技法)

【 泡状内言法 】

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高橋という青年が、JR秋葉原駅の昭和通り口をぬけて青空を見あげた。
「ぶぇっくしょん!」
(ったく……)(春って最悪)(ほんと最悪)(いいことなんて一つも)(花粉が飛んでくるし)(猫は盛るし)(飲酒運転が増えて危ねぇし)(しかも)
 高橋をやさぐれさせている要因が、もう一つあった。
「……はぁ、つぎこそ受からないとな……東大。」

※「アキハバラ∧デンパトウ」より引用
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視点人物の内言を、( )を連続させて書くこと。
泡がぶくぶくとわきたつように、とりとめのない思考を表現する。

小説ではよく、一つの( )にだけ内言を書く方法が用いられる。
決してそれが悪いわけではないが、ともすれば単調で説明的な内言になってしまいがちだ。
そこで、複数の( )を連続させることにより、一つ一つの内言がくっきりと区切られ、つぎの内言に移るときに「飛躍」を発生させることができる。
上記引用文では、(ほんと最悪)(いいことなんて一つも)(花粉が飛んでくるし)という内言のあいだに多少の飛躍が発生している。

二十世紀のはじめごろに流行した手法に、「意識の流れ」というものがある。
ジェームス・ジョイスやヴァージニア・ウルフなどの小説で使われていることで有名だが、日本でも昭和初期に横光利一や川端康成がジョイスの影響を受けて「意識の流れ」を取り入れている。(たとえば横光利一の「機械」)

「意識の流れ」は十九世紀の心理学から発生し、実際の人間の散漫な意識をありのままに書こうとした手法だが、非常に読みづらいという欠点があり、娯楽小説で使うには工夫がいる。

泡状内言は、「意識の流れ」よりはリアルな効果はないが、より読みやすく、飛び飛びになっている意識を表現することができる。
書いてる人

藍上 陸(らんじょうりく)

藍上 陸(らんじょうりく)
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