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高雄統子演出の「止め絵ED」

デレマス二期が刻々と近づいてきて、こらえきれず全裸で待機している毎日ですが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。

前回では高雄さんの「部屋」の演出について書きましたが、今回は「止め絵ED」について。

アニメ「THE iDOLM@STER」(錦織敦史監督)のEDでは、一話ごとに異なった止め絵と楽曲が使われています。
流れる曲に合わせて、数枚の絵が、一枚ずつ示されていきます。
PANやT.B/T.Uと組み合わされることが多いです。

高雄さんも何話かEDの絵コンテ・演出を担当されていますが、なかでも4話が出色のできばえです。
名曲「蒼い鳥(TV ARRANGE)」とともに、如月千早を映した六枚の絵が順々に流れていきます。

説明のため、以下にその六枚の絵を引用しますが、ぜひアニメーションで音楽とともに見ていただきたいです。

THE IDOLM@STER 第04話 ed1
THE IDOLM@STER 第04話 ed2
THE IDOLM@STER 第04話 ed3
THE IDOLM@STER 第04話 ed4
THE IDOLM@STER 第04話 ed5
THE IDOLM@STER 第04話 ed6


最初にこのEDを見たとき、思わず「ずるい!」と叫んでしまいました。
たった六枚の止め絵と音楽で、これほどすぐれた表現をしてしまうのですから、もうお手上げです。
もちろん、この感動はアニメ本篇からの流れがあってこそのものでもあるのですが、すぐれた演出家には原画枚数の多寡は関係ないんだということを気づかせてくれます。

高雄統子さんの演出のすばらしさを端的に伝える上で、この4話のEDは好個の例かもしれません。

六枚の絵を見てまず気づくことは、どれもよくレイアウトが考えられて作られていることと、一枚ごとにショットサイズやアングルに変化をつけて、見る者に刺戟を与えているという点です。
静止画ではわかりませんが、PANする方向も毎回変わっています。
以下に一枚ずつ感想を書いてみます。

まず最初の千早の脚のカット。

THE IDOLM@STER 第04話 ed1


まず脚から入るところがかっこいいですよね。あえて顔を映さず、コンビニの袋を映して、「いまコンビニに寄って帰るところだよ」ということを示しています。
曲に合わせて下から上へ「じわPAN」していきますが、それによって視聴者の視線を、画面の中央へと誘導します。
それにより、二枚目の千早の立ち位置にスムースにつながるわけです。

THE IDOLM@STER 第04話 ed2


人が何人も映っていますが、視線誘導がうまくいってるため、自然と千早の姿が発見できます。
今度は、左から右へじわPANしていきます。
そして三枚目へ。

THE IDOLM@STER 第04話 ed3


今度は、さっきとは逆に、右から左へとじわPANしていきます。
→と動かしたあと、←と反対方向へ動かすことにより、「揺さぶり」をかけています。
そしてつぎの四枚目で動きが止まります。

THE IDOLM@STER 第04話 ed4
(※大きなおっぱいに顎を乗せる千早)

この風呂場のカットは、PANをしていません。
古い映写機のようなちらつきのある映像で、少し変化があるように感じられますが、たしかにFIXです。

これはなぜでしょうか? そうです、つぎのカットを引き立たせるためです。
ここでいったんFIXで「ため」を作っているのです。
そして歌がサビに入るところで、きわめつけのカットの登場です。

THE IDOLM@STER 第04話 ed5


思わず「うぉおお!」と叫びたくなる圧巻のカット。
静止画で見るよりも、やはり動画で一連の流れを見てもらいたいです。
これまでの細かい演出が、すべてここに結実していることがわかります。

ここでは下から上へじわPANしていきます。
このカット、じつに迫力が感じられますが、その理由として、やはりレイアウトの妙があります。
カメラ位置をさげたローアングルで、千早を見あげるように撮ったカットですが、これはかなりアニメ的な誇張が入っています。
この絵を実写で再現するのは難しいでしょう。

たとえば、ローアングル(ローポジション)で有名な小津安二郎監督の遺作「秋刀魚の味」(1962年)ですと、こうなります。

秋刀魚の味①

秋刀魚の味②


あるていど人物からカメラを離して撮っていることがわかります。
では、もっとカメラを人物に近づけるとどうなるでしょうか?
そうすればたしかに千早の絵のように大きく映りますが、そうすると床(畳)が映らなくなっちゃうんですよね。また、アオリがきつくなって、顔の角度も変わってしまいます。

やはりこの千早のカットは、床が映っていることが重要なのです。
床におしりがついている状態で、頭部を頂点とする三角形の構図になっているところがポイントです。
ものすごく強固な構図ですよね。かなり小津的といえます。この千早のカットに直接影響を与えたかどうかわかりませんが、小津安二郎は、いまのアニメ界に多大な影響を与えていると思います。
その三角形の構図から、上に向けてじわPANしていくことで、さらに映像の力が増します。

小津監督はすべて標準レンズで撮影していますが、望遠などほかのレンズを使ってもこの千早の絵の再現は無理でしょう。
同じくローアングルで有名な加藤泰監督の逸話に、雪歩ばりに地面に穴をほってカメラを入れ、特徴的なローアングルを貫いたというものがありますが、それでもやはり再現できないでしょう。

僕たちがこの千早のカットを見て「おおっ!」と思うのは、ふだん実写では見られない絵だからというのもあると思います。生理的に「ふつうとちがう」と感じられるのです。
こういう誇張ができるところが、絵の強みですね。
そして最後のカット。

THE IDOLM@STER 第04話 ed6


思わずベッドにダイブして千早を慰めたくなりますね。(なんだその感想は)
このカットは、わかるかわからないぐらいにじわ~っとT.Bし、映像が終わります。
天井を眺めている無表情な顔がそそりますね。(なんだその感想は)

なお、このEDは、レイアウト・原画を松尾祐輔さんが担当しています。
高雄さんによる絵コンテと演出処理でどこまで細かく指定が入っていたかわかりませんが、松尾祐輔さんの功績も大というべきでしょう。

一連のカットで、千早はカメラ目線でないことが印象的です。
まるで隠しカメラで盗撮したかのようですが、これは高雄さんがシチュエーションを見せることを重視したためと思われます。
たとえば、ほかの演出家(錦織監督や祐祐さんなど)が担当したEDでは、キャラのイメージカット的なものも散見されます。
「キャラのかわいさ」を押しだすタイプですね。もちろんこのタイプのEDが悪いというわけではありません。

高雄さんの場合は、シチュエーションを通じて、キャラの内面を表出させようという意図が強い気がします。それがレイアウトのこだわりにもつながっているのでしょう。

この止め絵EDを見て思いだすのが、富野由悠季監督が「富野由悠季全仕事」のなかで述べておられることです。
たしか「シートン動物記」だったと思いますが、この仕事で富野監督は「たとえ止め絵のみの構成であっても、PANの方向やカミテ・シモテの原則を知ることで、映像として成立することを勉強した」という趣旨のことをおっしゃっていたと思います。
たしか「映像の原則」でも同様の趣旨のことをおっしゃっていたような……?
二冊ともかなり昔に買って、書庫用の家に置いてきてあるので、正確な引用ができなくてすみません。

この高雄統子さんの止め絵EDでは、まさにそれ実感することができました。
デレマスの二期でもきっとすばらしいEDが見られることでしょう。
書いてる人

藍上 陸(らんじょうりく)

藍上 陸(らんじょうりく)
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小説書いてます。

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